聖クリストフォロのメダイ

スタインガー神父の御体験

金曜日の朝の聖祭の後、司祭館の電話が鳴りました。それは母親が重篤であるという、ある農夫からの電話でした。
その農夫は彼女に終油の秘蹟を授けていただくために自家用車で司祭を迎えに行こうとしましたが、どうした訳か車は動かず、一時間以上も無駄になってしまいました。
そこで農夫は司祭に、御自分の車か、もしくは農夫の負担でタクシーを使用して下さる様に頼みました。

それから15分以内にスタインガー神父は自家用車でそちらに向かい、農夫と御聖体を運んで彼の母親に秘蹟を授けた後、帰路につきました。

スタインガー神父はその道をこれまで数百回も利用した事があり、その道を熟知していました。
その自家用車は新車でありましたが、そうではなくとも機が熟する時はいつでも騙すという悪魔の脅迫を心に留めて忘れず、神父は慎重に運転していました。

彼は自身の守護の天使と守護聖人である聖ヨゼフに安全な帰宅を祈りました。
神父が運転していると、突然黒雲が目前に出現しました。
それは丁度橋を通って、深い峡谷の上に移動しようとしていた時であり、雲は両目を覆うかの如きでありました。

その次の瞬間、衝突事故となりました。神父は自身が散乱した残骸の中にある事に気がつきました。
自動車は言いようのない力でもって橋の欄干に衝突したのです。完全な残骸となった自動車は、刻々と下方の深き穴に落ちようとしつつ、鉄の格子に掛かっていました。

事故の衝突音はそこから遠く離れた農地を耕作していた農夫の耳にも入り、彼らは驚きました。
神父が丁度そちらの方に向かっていたという不安で一杯で、そちらに急行しました。
「ああ、何て事だ!あれは神父様の車だ!神父様、神父様、一体何が起こったのでしょうか?御怪我をなさいませんでしたでしょうか?」

神父は残骸の一部の下からゆっくり外に這い出ました。
車のハンドルさえもバラバラに潰れていましたが、神父の足を傷つけませんでした。

残骸を残し、農夫は自家用車を取りに戻った後、震え青ざめている神父を医師のもとに運びました。
医師は神父に小さな外傷と興奮を見ましたが、それ以外の異常は見つけませんでした。

診察室を出て、彼らは司祭館に向かいました。
全ての司祭は祓魔式のために修院に出ており、誰もいませんでした。
スタインガー神父も修院に向かい、その部屋に入ろうとすると、復讐と激しい鬱憤に満ちた、騒々しい笑いで迎えられました。

「ハハハ、今日彼は誇り高き首を突っ込んで、判定勝ちをしたのだ。私は確かに今日、彼に現れたのだが、おまえの新車、バラバラに壊されたあの素晴らしい車はどうであろうか?それはお前を正しく扱ったのだ!」

他の者達は不思議そうにスタインガー神父を見つめました。神父はまだ顔色が悪かったのですが、そうした事で悩んではいませんでした。

「神父さん、悪魔は事実を語っておりますか?」彼らは尋ねました。
「はい、彼が語っております事は事実です。私の自動車は完全な残骸となりましたが、彼は私個人を害する事は出来ませんでした。」

素早い答えが返ってきました。
「我々の狙いはお前を捕らえる事であったのだが、どうにか我々の計画が妨害されたのだ。お前を害する事を防いだのは、お前の守護聖人であった。」

この事故の知らせはすぐに広まり、人々は最愛の司祭に対する心からの同情をもって、彼が新車を購入するための資金を得させました。

それゆえ、悪魔は自らの戯れから満足を得る事が出来ず、幾度も楽しんでスタインガー神父にこの事件を思い出させて脅迫しました。「更なる全き楽しみのために備えよ。」

悪魔はまた、自らがしばしばより速やかなる滅びのために、同様の事故を引き起こしているという事を語る事によって、その本性を現しました。
かくの如くして訴訟がしばしば引き起こされ、それは世人の間で多くの憎悪と誤解に対する反応であり、彼は復讐と怒りの発散を得る事が出来ます。

読者はこれに対して彼自らの結論を分析するかもしれません。
人類の敵が現実にそうした事故において大いなる役割を果たす事を、直ちに否定する事は出来ません。
彼は「まさしくその初めより殺人以外のものであろうか?」。

公教会は悪しき壊滅的な影響に対し、聖クリストフォロの特別なる天の聖寵を捧げられました。
それゆえ、安全を願ってこの聖人の各種のメダイ、もしくはロザリオのいずれか一つを自動車に置く事が慣例となっています。

聖パウロはまさしくその大気が悪魔によって満たされるという事実に注意を促しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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