12世紀の英国の制止された逃亡の修女

 

英国のフォンテンブレーにある「シトー会の修女の家」と呼ばれる所で、ある非常に美しく善良な若い高貴な女性がいました。
そして彼女はマリアへの信心でよく知られていました。
彼女が聖母の御像の御前を通る際にはいつも、「めでたしマリア」と言って片ひざをついて敬礼しました。

しかし偶然悪魔、常にかかる事物を考案して行うのに慣れている者によって、彼女は高貴な騎士と恋に落ちました。
騎士は彼女の美貌と善良さについて聞かされ、彼女と話そうと親類のふりをし、何とかある夜に二人で一緒にそっと出て行かなければならないと彼女に信じさせました。

その予定の夜になって、彼女が戻って寄宿舎に行く代わりに狭い裏戸の中に隠れようとして、一列から離れました。
そして全ての修女達が去った事を確かめると、彼女は隠れていた場所を離れて中央祭壇に行って跪いて、習慣通りに言いました。
「めでたしマリア」

しかし十字架の御像近くにあったそのマリアの御像は彼女が出て行こうとしているのを見て、大声で言いました。

「わが娘よ、どこに行くのですか?貴女は悪魔のために私とわが御子のもとを去るのですか?
そして私に光栄を帰した習慣の祈りをあざけるのですか?」

それから十字架の御像の御姿が動き出し、主は御自分を固定している釘の一つを取り外してそれを投げるために御手を挙げられました。
そのため一つの釘は彼女の頬を貫き、彼女は意識を失って床に倒れました。

翌朝修女達が修院に入り、十字架の御像の右手が挙がって不正を打つ態度であられる事を見つけました。
今日まで、それが起こった事の証拠として現存しています。
それから床に倒れている彼女を見つけ、修女達は彼女の頬から釘をむしり取りました。
そして彼女は意識を回復すると、大いに泣いて罪を完全に痛悔しました。
彼女はそれからは信心深く敬虔な修女としてあり、天主への仕えのうちに生涯を閉じました。

あの騎士は、彼の四人の親類と共に一晩待った後に恥をかいて、彼女にあざけられたと思って去りました。

この話しの記述者による訓戒です。
「しかして悪魔によって駆け落ちするために修女と騎士の心を準備させられたとしても、常に悪魔の敵である主イエズス・キリストは悪魔がもたらした全てを無効にして、元通りにしたという事である。
修女が騎士より心を取り戻したのは天主の義罰のためであり、騎士の心は恥辱への怒りから修女への恋慕が消え去った。

更に何が起こったかについて彼が学んだとき、彼は己を大なる罪人と考え、犯した罪を痛悔し、修士になるために世俗を離れ、よく天主に仕え、信心深く生涯を閉じたのであった。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

inserted by FC2 system