司祭のマリア運動に対する疑問

 

<司祭のマリア運動の起源と発展の経緯>

この運動は、1972年5月、イタリアのステファノ・ゴッビ神父がファティマに巡礼した際、聖母御出現の聖堂においてインスピレーションを感じて思い立ったものである。
彼は同年10月13日、この運動の賛成者二名の司祭とミラノ教区のコモ湖に近い司祭館に集まって、司祭の成聖と使命遂行について討議した。
大司教はこれを聞いて、教区内にこの運動を進めるように便宜を図った。
1980年現在の統計によれば、世界85カ国に二万人以上の司祭が参加している。

 

<この内的語らいと呼ばれるものについて>

多くの調査の後、1998年10月17日、「司祭のマリア運動」の責任者であるアルベルト・G・ロウクスより「司祭のマリア運動の全てのメンバーへ」という書簡がありました。
書簡の文章は以下の通りです。

「もし司祭のマリア運動とこの啓示の本が公教会より公的認可を受けるならば…完全な調査は教理省によって行われねばなりません…重大なる審査の後に啓示と司祭のマリア運動について公的に宣言をするのは教理省の役割です。」

「司祭へのこの本のイタリア語版を出版する前に、聖母の愛する子なる教理省の秘書(ベルトーネ大司教)のゴッビ神父への私的書簡において、本の導入部においてこれらの伝達が聖母からであるのではなく、自分の黙想の成果である事を主張するように勧告されました。」

この文章はつまり、司祭のマリア運動と啓示が認可を受けていない事、また啓示ではない事を裏付けています。

ゴッビ神父は本の導入部については要請に応じましたが、同時にアルベルト・G・ロウクスは言います。

「彼(ゴッビ神父)は未だ、自分が天主の御母より啓示を受けていると明確に主張し続けています。」

 

 

ゴッビ神父の言葉、若しくは「預言」における誤り>

 

1975年1月4日、ゴッビ神父は聖母から以下のような内的語らいを受けたと主張しました。

「あなた方もしいたげられるでしょう。
あなた方が灯っているままのただ唯一のともし火である時、その時がくるでしょう。
そしてこのようにして、聖福音とあなた方の苦しみ対する忠誠とによって、あなた方は非常に多くの霊魂に救霊の方法を指し示す事が出来るでしょう。
そして私の干渉によって、あなた方のこの光は決して完全に消されません。」

ここで云われる「あなた方」とは、「司祭のマリア運動」に属する全ての聖職者を含んでいます。
それはこの運動に加わっていない他の全ての聖職者を除外しています。

「司祭のマリア運動」に加わる全ての聖職者だけが「唯一の灯っているままのともし火」であり、これに参加していない教皇、枢機卿、司教、修道者、司祭、そして平信徒の全てが暗闇を歩むと主張する事は公教会の教えに反します。


 

1975年4月25日に、ゴッピ神父は聖母が次のように「啓示」されたと言いました。

「わが子なる司祭らの幾人かがわが御子、私自身と教皇と公教会とに公然と反対する備えを為す時、その時が来ます。
わたしはもはや彼らをわが子とは認めないでしょう。
私がわが至愛なる御子の一団(司祭のマリア運動の事)の頭とわからせるために、私自身が天より降臨して、彼らのはかりごとを踏み砕くでしょう。
私は天より降臨します。」

聖母が「司祭のマリア運動」に関わる聖職者のために、肉体を持って降臨される事はあり得ません。

 


 

1975年10月24日に、ゴッピ神父は聖母が次のように「啓示」されたと言いました。

「このようにして、また"霊"があなたの内に語ります。
そしてあなたを使って"霊"によって、全世界が完全に新たにされます。」

(ここでいう"あなた"とはゴッビ神父のみならず、司祭のマリア運動に参加する全ての聖職者を指しています。)

この声明は、「司祭のマリア運動」に参加する聖職者のみによって、世界が新たにされるとしています。
つまりこの運動に加わっていない教皇、枢機卿、司教者や司祭、修道者、そして平信徒らは恩恵を持っておらず、"新たにされる事"が必要であると言います。

 


1989年3月26日に、ゴッピ神父は聖母が次のように「啓示」されたと言いました。

「キリストの立ち昇りし御意思は、あなたの只中に彼の御国を元通りにする事であり、かくして創造された宇宙全体によって称えられるでしょう。」

公教信仰においては、聖なる公教会こそが地上における御国の始まりにして、またその使命は聖霊降臨の日よりの聖霊の御導きによるものとしています。

 


1988年9月11日に、ゴッピ神父は聖母が次のように「啓示」されたと言いました。

「10年間のピリオドにおいて、ラサレットから始まった、最近の現在の示現までの全ての方法を持って私によってあなたに示された機が熟し、完成に達します。」

「10年のピリオドには、旧約と新約聖書においてあなたに示されたイエズスの再臨の前の艱難があり、そうして時は完成に達します。」

この「預言」もまた当たりませんでした。

 


1989年6月17日のフランスにおいて、彼は聖母から次の言葉を受けたと言いました。

「すなわち3倍である、三度表される666は1998年を表します。
歴史のこのピリオドに、教会の儀礼によって支えられしフリーメーソン団は大いに功を奏するでしょう。
キリストと彼の公教会の代わりに据えるための偶像を置き、間違ったキリストと間違った公教会があるでしょう。」

これは決して現実のものとなりませんでした。
正しい天からの預言が外れる事はありません。

 


1995年の532番目の「啓示」では、聖母がゴッビ神父に次のように語ったとしています。

「私は2000年の大いなる記念によって、ファティマであなたに予告した、私の汚れなき御心の勝利が起こる事を確かめます。
そしてこれは、栄光のうちのイエズスの再臨と共に起こるでしょう。
そして世界において彼の統治が確立されます。
このようにして、ついにあなた自身の目で新しい天地を見る事が出来るでしょう。」

これも実現しなかったのは明白です。


更にゴッビ神父は次のように語りました。

「栄光のうちのイエズスの再臨は、最後の審判のために、最後に来り給う前に起こります。
従って、我々は世の終わりの前に主が御現れになり、しばらくこの世に戻り給う事を確信する事が出来ます。」

公教会の教義では「キリストが栄光のうちに来り給う時、最後の審判がある」とします。
ニケア信条では「主は栄光のうちに再び来り、生ける人と死せる人とを裁き給う」とあります。
彼が語った言葉は教義にも反しています。


(良心の糾明について)

「全ての人は天主の真理の燃える火の中にある主御自身を見ます。
それは審判のミニチュアのようです。
それからイエズス・キリストは世に栄光ある統治をもたらされます。」
([啓示]383)

この"啓示"の内容は、公教会に否定されたジャンナ・タローン・サリバンの"啓示"にも見出されます。
また教義的にも誤りです。


「全体の創造した宇宙によって光栄を帰されるため、キリストはあなた方の中に御国を新たにされるためによみがえられました。」([啓示]402)

キリストの御国は天にあり、地上にはありません。


「事実あなたの御母として、私はあなた方全員を私の汚れなき御心に受け入れました。
あなたが世の救いのために犠牲となる祭壇にしてよりどころはここにあります。」
([啓示] 87)

この言葉はキリストの犠牲とゴッピ神父と「司祭のマリア運動」が対等であると受け取れます。


「愛する子らよ、彼の再臨は、あたかも最初のものの如くこの晩に生まれ、再び栄光のうちにイエズスが戻られます。
最後の審判のために来られる前に、また御父の秘密で隠される時間があるでしょう。」

「彼が突然に来るなら、世は彼が来たり給うための備えがないでしょう。
彼は御自らのために備えのない人々のために審判の前に来たり給います。
彼は世界において御国を創られるために、打ち負かした後、彼の敵共を滅び尽くされるでしょう。」

「彼の再臨においてさえ、御子は御母によってあなたに来ります。
来たるためにわが清浄なる胎を用いられた御父の御言葉の如く、また再びイエズスは私の汚れなき御心を用いられて、あなた方の中で統治されます。」
([啓示] 166)


キリストが人性を受けて再誕される事はなく、更に再臨の前にキリストが来られるという内容は、公教会の教義に反しています。


1978年2月10日に、ゴッビ神父は、聖母がこのように啓示されたと書きました。

「あなたの天の御母が、最愛の第一の子(パウロ6世)の霊魂を連れ来られし後、暗黒はますます公教会を襲い、濃くなるでしょう。
彼は、十字架上で、最高の犠牲を完成しています。
彼が生きる限り、彼の重大なる殉教のお蔭で、私はまだ、主の義の御腕を引きとめる事ができるのです。
しかし、彼の死去の後、一切が崩れ落ちてきます。
公教会は誤りのうちに沈められ、つかまれ、遺し伝えられ、そのようにして変節していき、それが頂点に達します。」

 

教皇パウロ6世は、この「啓示」から6ヵ月後に亡くなりました。
それからヨハネ・パウロ1世、そして1978年10月11日に、ヨハネ・パウロ2世が選出されました。

それからゴッビ神父は、突然聖母からの預言を正反対に修正しました。
聖母がこのように語ったとします。

 

「今日、あなたは私の汚れなき御心に、公教会の善の為に、イエズスより得られた新教皇の為に祈りました。
彼(教皇)が聖職の初めより、自らを私の御心に捧げたので、彼は殊に私より愛されし息子であり、御摂理が、今日あなたに与えた教皇と、大いなる勝利の時のために、私の御心によって全世界より選ばれし私の愛する子ら(司祭のマリア運動の参加者)なるあなたを祝福します。」


<新しい教会>

1987年1月1日のゴッビ神父の第四版の本には、聖母からの私的啓示とする、次のような言葉が見られます。

「更に強大になる一切を包む暗黒に、この人と教皇、ヨハネ・パウロ2世の仕事の中に、私はより強き光を反射します。」

聖書と教義では、聖母はキリストの光を反射するのであり、聖母御自らが、誰かの中で光を反射するという事はありませんし、先の預言とも矛盾しています

 

更に、1978年10月13日には、聖母からこのような言葉を受けたと言いました。

「私は密かに、わが御心のうちに、全き光なる新しい教会を準備していました。」

聖母は公教会の御母であり、キリストの教会以外の新しい教会を作られる事は考えられません。


 

<教会否認可の私的啓示や示現に対する信心を公教会信徒に奨励するゴッビ神父>

1984年12月8日のフランスにおいて受けたとされる「語らい」の中で、聖母がメジュゴリエに出現したと伝えられたと言います。

また同じく否認可のギリシア教のヴァッスーラ・ライデン夫人に対する「私的啓示」と称するものに対し、「ヴァッスーラは教会の中でその役割を持っており、主の指示に従って動いています。
(中略)
ヴァッスーラの集まりでは、ヴァッスーラの集まりの祈りをするように。」
と語っています。

 

つづく


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